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執筆者の写真黒野でみを

【映画レビュー】『SMILE スマイル』 「笑う」姿の恐怖をインパクト抜群に表現した本作のポイントは次作にどうつながるか?

(C)Warner Bros.DC EntertainmentAtlas EntertainmentCrackoon2022, 2024 PARAMOUNT PLAYERS, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES


間もなく全米公開となるホラー映画『Smile2』が日々話題を呼んでいる今日この頃。先日はジャック・ニコルソンの息子レイ・ニコルソンが出演となるなど、注目がさらに集まっている本作でありますが、今回はこの新作の予習的な意味合いで第一作『SMILE スマイル』をご紹介したいと思います。


二世タレント出演という意味では、本作には映画『フットルース』などで名を馳せたケビン・ベーコンの実娘ソシー・ベーコンが出演というところでありますが、本作は逆にその出演者のプロファイルがあまり発揮しないところに、作品の面白さが出るところでもあります。そして「笑う」顔に恐れおののく人たちの表情も見事!


【概要】

(C)Warner Bros.DC EntertainmentAtlas EntertainmentCrackoon2022, 2024 PARAMOUNT PLAYERS, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES


一人の女性医師がある日一人の男性に遭遇したことから「不気味な笑顔」の恐怖におびえるさまを描いたホラー映画。


本作を手がけたのはパーカー・フィン監督。2020年に自身が制作した短編『ローラは眠れない(Laura Hasn't Slept)』を長編映画化、同時に脚本も手掛けており、本作が長編初監督作品となりました。


主演を務めたのは、『チャーリー・セズ マンソンの女たち』などに出演するソシー・ベーコン。彼女はケビン・ベーコンの娘としても知られています。他にも『インデペンデンス・デイ リサージェンス』のジェシー・アッシャー、『エルム街の悪夢(2010年)』のカイル・ガルナー、『オール・チアリーダーズ・ダイ』のケイトリン・ステイシーらが名を連ねています。


2022年製作/115分/アメリカ

原題:smile


【監督・製作・脚本】

パーカー・フィン


【出演】

ソシー・ベーコン、ジェシー・アッシャー、カイル・ガルナー、ロビン・ワイガート、ケイトリン・ステイシー、カル・ペン、ロブ・モーガンほか


【あらすじ】



ある日、とある大学で発生した教授の自殺事件。精神科医のローズは、その自殺を目撃した学生ローラのカウンセリングをすることに。


受診前からひどくおびえた様子のローラでしたが、ローズが診察を始めると彼女は突然暴れた挙句、ローズに向かって笑顔を浮かべたまま自らの首をかき切って自殺してしまいます。


以降、ローズは周囲で謎の笑顔を浮かべて豹変する人を度々発見するなどの不審な出来事が連続して発生、その不安感とストレスで彼女は精神的に追い詰められていくのでした……。


【『スマイル』の感想・評価


『不気味なほどの「笑顔」と恐怖におののく姿の対比』

(C)Warner Bros.DC EntertainmentAtlas EntertainmentCrackoon2022, 2024 PARAMOUNT PLAYERS, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES


本作の「笑顔を見せる人々に恐れおののく人の姿」というポイントは、以前本メディアのレビューでも紹介した『スナッチャーズ・フィーバー』を彷彿するところでもあります。その意味で両作品を比較してしまいたくなるところであります。


『スナッチャーズ・フィーバー』がほぼPOV映像で構成されており、そのタイトルからも『SF/ ボディ・スナッチャー』(1978)を思い出す人もいるでしょう。つまり人知れず町の人々が何かに乗っ取られるという恐怖 を描いています。これに対し本作は典型的な典型的な映画視点、恐怖におののく人の表情をもしっかりと映し出しているところに大きな違いが見えてきます。



つまり前者が完全にいわゆる「モンスター」のみの存在感による恐怖を追っているのに対し、本作は「モンスター」とその恐怖を被る人物の表情という両方を合わせて「恐怖」を表現している作品となっており、徹底的に「笑顔を恐れる人」の姿より怖さ自体を追求した作品であるといえるでしょう。


「私は、本当に技術に重点を置いた、非常にユニークな体験を創り出す、そして人間の状態を探求する登場人物主導の物語でもある映画を作りたかったのです。しかし、観客が席から飛び上がって大声で叫ぶような映画にもしたかったのです。」


メディアのインタビューでこう語ったパーカー・フィン監督。まさしく被害者、いや「被恐怖者」中心の視点という意味でこの意志は重なるものがあるといえるでしょう。そしてこの恐怖にチョイスしたジャンプスケア(※)もセンスが感じられるものであります。



この描き方は、本作のもととなった短編『ローラは眠れない』にも見えるところでありますが、短編第一作『The Hidebehind (2018).』にもその片鱗が見えるところであります。その意味では「パーカー・フィン節」ともいえるスタイルの完成された一端を垣間見ることができる作品であるともいえるでしょう。


また、今回短編から長編化作品を作り上げるに当たり、主人公ローズのエピソードに触れたり、「負の連鎖」を断ち切るための模索エピソードが描かれたりと、諸々の工夫がみられるところであります。


一方、そのエピソードにはどこか映画『リング』(1998)を彷彿するところもあり、ホラー映画の美味しい本質をうまく織り込んでいる印象もあり、非常に見応えのあるホラー作品として仕上がっているといえるでしょう。ホラーとしてのセンスが抜群にうまく表現された本作。第二作がどのような展開を見せるのかも期待したいところであります。



※ジャンプスケアとは:




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